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2018/04/09

『伸びる会社は「これ」をやらない!』で分かった組織マネジメントの原理原則


本気で会社をよくしよう、よい社長になろう、と一生懸命に取り組んだ組織運営がうまくいかない理由は間違ったことに全力を挙げていたからだと看破し、社長や管理者の言動が組織内に誤解や錯覚を生んでいると指摘します。「識学」という意識構造学に基づく企業コンサルティングの第一人者である著者は、これまで多くの企業で業績を向上させた実績から、どのような言動が正しいのか、伸びる会社がやらないポイントを解説。正しい組織運営を実践すると、組織は見違えるように変わり、社長や管理者だけでなく、社員一人ひとりまで活き活きと働き、業績がアップしたのです。組織パフォーマンスを最大化するマネジメントに悩む社長や管理者必読の書です。

悪影響を与える組織運営上の誤解や錯覚


本書では、「社長や管理者が会社のためによかれと思って行っていた言動が、いかに組織に悪影響を与え、どういう言動が正しいのか」を解いています。

読者の「常識とは全く逆のケースを述べている部分」もありますが、「騙されたと思って一度実行し、ブレずに続けると組織は必ずよい方向に進む」と言い切る姿勢には実績の裏付けによる信頼感があります。

そこでは「識学」という意識構造学が用いられています。組織運営の誤解や錯覚の発生要因と解決策を学問的に解明。大きくは、「①会社に所属する人の間で生じる認識のずれ、②事実のしくみ」にあるという分析をまず理解することが重要です。

ビジネスの仕組みでは、「お客さまにサービスを提供する → お客さまから対価をいただく → 会社が社員に給与を支払う」が正しい順番。

ところが、多くの働く人たちは、「会社が社員に給与を支払う → お客さまにサービスを提供する → お客さまから対価をいただく」順番と誤解していると断言。「このような認識をもった人が集まる組織は必ず運営で破綻をきたす」と、覚醒を促しています。

社長の役割と行動ルール


組織運営に苦慮し、誤解や錯覚を多く発生させる社長には、社員から好かれたいという特徴があると見抜きます。「一人ひとりの社員に寄り添い、それぞれの悩みを社長みずから聞いてあげる」ことが会社の成長につながると本気で思う社長に対して、「社員に好かれるために、よかれと思って社長がとった行動が組織内に誤解や錯覚を生み、結果的に社員が苦しむ」と強調しています。

社長という立場は組織において一番高いところに位置するポジションなわけで、社員の成長や未来にコミットし、個々の目標に向かって仕事をやらせるのが役割という点には納得です。しかし、現実の社会では自身の全うすべき業務について誤解している社員が近年多くなっているように感じます。

会社の意思決定について、社長と社員では見えている景色が違うので、社員はその善し悪しについて判断することはできません。「この業務は会社の目標に貢献していないのではないか?」という疑問をもつ社員が結果として出てくるわけです。しかし、そのような社員に対して数字目標をはっきりと与え、評価されるポイントを明確にしなくてはいけないのです。

多くの企業コンサルティングに携わった著者は、最近の風潮である社員の自発性に任せ、押し付けない方が自由な発想で組織も成長するという考え方には、「一見、理想的な組織運営であるように感じるが、しくみとしてありえない」と言い切ります。「同一ルール下に身を置かない状況ではコミュニケーションは成立しない」訳で、本文中に具体例で分かりやすく紹介しています。

よくある誤解に、社長みずから現場に入る姿を挙げて警告しています。社長が現場責任者より多くの時間を取れるはずがなく、組織の規模が大きいほど適切に諸問題を把握するのは難しいはずです。また、社長が現場に出ると、「起きている問題を上司に的確に報告する機能は成長しません」と、社長の役割は現場責任者が目標達成に取り組み、的確に問題や改善策を報告するシステムを築くこと、という問題意識は大切だと思います。

評価基準と組織運営


社長や管理者は、がんばっている部下の姿をほめたり、モチベーションやチャレンジする姿勢などを評価しがちです。ところが、「社員のモチベーションアップのために取り組んでいることは、ムダであるばかりか、組織運営にマイナスの効果をもたらす」という指摘には、いま主流とされるマネジメント手法とは一線を画しているので正直驚きました。

「モチベーションが上がらないから、がんばらない」という誤解も成立するという論法には全くその通りと思います。このような曖昧な、がんばっているという精神論のほか、数字や事実で判断できない評価基準は間違いで、「評価すべきは過程やプロセスではなく結果」には大いに賛同できます。

組織づくりではルールや評価基準を明確にすることも大切で、「特例を認めず、当たり前のこと=姿勢のルールが曖昧だとすべてのルールが曖昧になる」は組織運営の基本だと思いました。

決断には正しい情報が必要で、社長自ら現場の部下一人ひとりの声に耳を傾けることは大切です。ただし、中間管理者を飛ばして直接、部下の指導や相談に乗ることはマネジメントの弊害というのは傾聴に値します。社長が直接口出しすると①役職者が無責任になり成長しない、②部下が上司を認識しなくなる、③上司が二人いると錯覚、④役職者の評価を間違えるとの訴えには耳が痛い方も多いと思います。

マネジメントと人材育成


社長が部下のやり方や仕事に細かく口出しするのは間違いと著者は断言します。これでは、部下は成長せず、考える機会を与えないことになるという指摘は確かにそう思います。

進捗状況の確認では「できたか、できなかった」と「次、どうするのか」の約束で十分。できなかった理由やプロセスを説教したり、部下と時間をかけて議論することは無意味で、部下の言い訳を聞くだけの時間の無駄と言い切っています。次どうするかを報告できる部下は、すでに反省済みで改善点を見付けており、判断に感情が出るプロセスの管理より、事実や結果から先を見据えることが大事だと実感しました。

政府が掲げる働き方改革でも話題の日本の企業では遅くまで残業すると頑張っているという企業風土があります。結果が同じなら残業時間が少ない社員の方が評価されるべきという「会社を成長させていくうえで時間に対する感覚を鋭くもつことは、最も重要なことの一つ」は説得力があります。

人材育成では、本人の意志を尊重したいはよくある誤解に挙げられています。本書では、仕事ができる人とは評価者の求めることができる人と定義。部下は与えられた職務を果たすことが大切で、評価するのは上司というのは大切な問題提起です。

新入社員に関しては、入社した瞬間に、会社を評価する立場から会社から評価される立場に変わり、学びを提供してもらえる立場から、学びを獲得しにいかなければいけない立場に変わるというのは的を得ています。「早く新入社員の誤解をすみやかに解くのが本当のやさしさ」という言葉は学生からの意識改革という意味で重要だと思います。

会社を伸ばし、社長は、目標を達成しようと思うほど、孤独な存在と言います。筆者は「社長が社内で孤独にならないということは、会社の機能がどこかで不具合を起こしている可能性がある」と述べています。社長の最大の仕事は会社を伸ばすこと、を常に忘れてはいけませんね。
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